1mmくらいしか知らないまま観劇した「劇場版 少女☆歌劇 レヴュースタァライト」の感想文

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““““““最高””””””知っちゃったな。

事前情報
・This is 天道真矢(焦点の合ってないフォロワーが定期的に呟いていただけなので誰なのかは知らなかった)
・東京タワー


アニメも舞台も何もかも見てないまま観賞したので、キャラクターとか間違えているかもしれない。そこは申し訳ない。

ただ少女革命ウテナ宝塚歌劇と、原作を担ってるネルケプランニングのミュージカルを履修したオタクなので、100%正解かどうかは分からないけど常に「なるほどそういう!!」って頷いてた。それくらい、解としては分かりやすかったと思う。


まず「少女☆​歌劇 レヴュースタァライト」という名前のとおり、構図としては宝塚のレビューだったなと思う。ネルケのミュージカルとかを含めた、いわゆる2.5次元的な舞台はストーリーをなぞって終わりというのが多いと思う。宝塚も原作のある、私が観劇した2.5次元的な作品は基本的にお芝居が主体で、最後に少しだけレビューをするというのがほとんどだったし。

でも実際は、宝塚歌劇というものはストーリーのある芝居半分、歌や踊りがメインのレビュー(ショー)が半分というのが主流なんだと思う。で、私が見たレビューの話になるけど、まったく違う世界観の(例えばファンタジーとか任侠とか現代劇とか80年代の映画っぽいやつとか単純にダンスパーティーとか)歌やダンスを見せるサイクルを細かく出していくスタイルなんですよ。それぞれに設定やキャラクターがいて、多少セリフとかもあるんだけど、それはさらっと流してとにかく歌!踊り!って感じで。

なので、電車に乗り込んだあたりから「ああ、ここからレビューのスタイルなのか」とわりとすんなり構図が分かったんですよね。一対一で、それぞれの女の子たちの「物語(ストーリーのあるものではない)」を語るんだなと。

それと、我々観客も含めての「舞台装置」だったなあと。何となくの体感だけど、序盤のストーリーがあった部分も「とくに舞台とは関係ない作品を舞台向けに落とし込んだら、この場所で歌とか殺陣が入りそうだな」っていう流れになってて。脚本がそもそもアニメというより舞台で上演するのを前提に書いているような、そんな印象を受けました。

アングルも、アニメだとあまりやる必要がないでろう「舞台の観客席から見える構図」をちょいちょい入れてたのも面白かったですね。彼女たちが演じているステージとの距離感も、全体が見える1階席後方、1階席中央らへん、最前席、2階席右前方とか、座席の位置が想像つくところにカメラ置いてたの細かくて笑ってしまった。最前席が映ったのはクロディーヌと真矢の時だったと思うけど、前すぎて舞台が全然見えないのめちゃくちゃ宝塚劇場って感じで拍手したかった。私は東京宝塚劇場しか行ったことないんですけど、宝塚劇場って舞台前面にオーケストラが演奏するボックスがあって、そこに銀橋があってスターたちが歩くんだけど、そのせいで一般的な舞台よりも最前ほど前が見えにくいっぽいんですよ。実際自分が座ったことないから分かんないですけど。まあ、どっちにせよ最前って良し悪しなとこがちゃんと出ててウケてました。

あと華恋とひかりが戦ってる時だっけ、手紙の看板がせり上がっていく機械音これマジで聞いたことある気がする……こういう音する気がする……って気持ちになったり。ステージの上の照明とかの足場も再現度めっちゃ高かった気がするし(確かひかりとまひるのバトルで出てきたやつ)、額縁がたくさんぶら下がってるようなやつスゲー見たことあって笑った。ああいうの舞台あるある~~!!

曲も、すごく宝塚っぽかった……具体的に何がどうって説明できないけど「『少女☆​歌劇 レヴュースタァライト』が宝塚歌劇になったら流れてそうな曲」としか言えねえ……。原作ある作品の歌も全部オリジナルで作られるんだけど、ああいう感じになるんだよマジで。曲の入り方というかタイミングが、実際に歌いながら殺陣(ダンス)をしてそうな流れで私にはずっと歌ってる幻覚が見えてた。

あのキリンが何なのか、これまでどういう描かれ方をしていたのかは分かりませんけど、私には観客(=我々)に見えました。アニメの終わり方も分からないけれど、キリンの言い方だと「美しく終わりを迎えた物語も、観客が熱望すれば役者は再び舞台の上に引きずり出される」という感じもしましたがどうなんだろうね。ただ、舞台というのは主役がいて、役者がいて、観客がいないと成り立たないものだし、観客がいてこその役者たちだと思うから、キリンは正しく役者たちの熱量、その身を彼女たちの血肉とする役目を果たしたんだろうなと。あと華恋とひかりの対峙で「客席が近い」ってこっちを見てたのも、本当に「観客」を見ていたんですよね。そういう意味でも、映画というより舞台を見たという感覚が強い。

トマトが何なのかも分からんけど、彼女たちが熟して、次のステップへ進むってことだったのかな。それとも血のりは全部トマトジュースかトマトケチャップってことなのかな。痛かったら可哀想だもんね。

でも一番面白かったのバミリだな。最初に東京タワーがT字の物体に破壊されていた時はさすがに「?」ってなったけど「この形……まさかバミリか?!」って思ったら本当に答え合わせがあってアハ体験しちゃった。バミリって役者が「留まるべき場所」でもあるから、彼女たちが立ち止まって演技をしたり、考えたりするときに登場するのはすごい正解だと思う。ずっと同じバミリににいる必要はないし、そこから次のバミリへ移動するものだしね。


彼女たちのパーソナルなところは分からんので想像だけど、一対一で戦った子たちは「トップ男役」と「トップ娘役」みたいな印象でしたね。全員が全員じゃないけど、トップスターが引退すると一緒にトップ娘役も引退することも結構あるし、そういう互いを預ける一蓮托生ぽいところが。名前からしても「愛城華恋」は娘役、「神楽ひかり」は男役っぽいし。トップ男役が引退して目標を見失うとか、最高の舞台を経験して道が見えなくなったようなイメージは何となくわかるので、そういう文脈で見てました。あ、クロディーヌと真矢は両方トップ男役ですね。ななはトップ男役、まひるは娘役2番手って感じ。双葉は男役2番手、香子はトップ娘役みたいな印象。

人間って誰しも本音で生きてはいないけど、役者が本音をさらけだせるのが板の上だとしたら、あの戦いは彼女たちが現実では吐き出せない本音をぶつけあえる場所だったのかなーという感じです。きっと誰もが舞台の上では嘘がつけないというか。そういう意味で本音!本音!!本音!!!で殴られたんで、分かりやすいなんてもんじゃねえ。これまでの彼女たちの軌跡は知らないので正解かは分からんですけど、あの場で見せてくれた関係性が1000%の“答え”でしょ。

クロディーヌと真矢、これが主人公じゃないのがちょっと意味分からんってくらい主人公だったな……。あの大階段も完全に宝塚の象徴を背負ってるやんけ……あれで主人公ではないのが逆にすごい。どんな演技も求められたとおりに完璧にこなす真矢、その真矢の完璧という仮面を引きはがし、さらなる高みの真矢を引き出すクロディーヌやべえなんてもんじゃねえぞ、運命であり永遠だろこんなの。


あ、関係ないけど幼い華恋とひかりが写真撮ってた劇場も、ロビーまんま宝塚劇場でテンション上がった。あと電車のポスターとか雑誌とか、あのへん全部本物っぽい「あるある」って感じで仕上げててウケた。たぶん元ネタあるんだろうなー。


冒頭に進路指導があったけど、時系列としては一対一の戦いを経て進路指導シーン、エンドロールなのかなって気もする。華恋はどこかの学校や団体に所属せず、フリーでオーディションとか受けてるのかな。それともどこか劇団とかにでも入ったんだろうか。答えが見つからなかったんじゃなくて、あの白紙が彼女の答えなのかなーって最後まで見て思いました。


あと東京タワーね。令和になっても東京タワーがモチーフとして使われる理由って、全体のシルエットだけじゃなくパーツとして分けても東京タワーだと理解できる使い勝手の良さがポイントなのかなと。上半分が飛んでバミリに刺さったり、横倒しになってレールになったりしても、足元(?)だけでも東京タワーだと分かる秀逸さ。いやだってスカイツリーが半分になったらスカイツリーだって分からなくない?あの色と形とパーツすべてが「東京タワー」という記号を表現していて、あれはスカイツリーには無理だわって思った。

変わったんじゃなく中に入ってただけだけど、少女革命ウテナ履修したから華恋が突然バミリになっても「はーんなるほどそういうことね」って動揺しない心を持っててよかった。