FFオタクの新作歌舞伎「FFX」見てきたよメモ(本編ネタバレ)

FFX歌舞伎、大変よかったです。ゲームのFF10含めてネタバレしかない感想文なのでご注意ください。

前提
ファイナルファンタジー(FF)シリーズ全般のオタク
FFX歌舞伎が決まってからシネマ歌舞伎で新作歌舞伎「風の谷のナウシカ」を観た(歌舞伎ファンに褒めてほしいアピール)以外に歌舞伎の知識一切なし

 

いつのまにかオフィシャルの公演レポートでてたからこっち見ればよくない?!?!

ff10-kabuki.com

尾上菊之助さん

まずは何といっても、菊之助さんがいなければいなければ成立しなかったでしょうね。正直なところ「話題性などを鑑みて新作歌舞伎のタイトル選考中にFFへ白羽の矢が立った」「その中でもストーリーの人気があり、オリエンタル要素が強く歌舞伎と親和性のあるFF10が選ばれた」とかでも全然問題ないと思うんですよ。商業的な成功ラインを見極めることはあって然るべきですし。

でもインタビューもろもろ見てると、菊之助さんが「FF10を超好き」以上の理由がなくて最高でした。

ちなみに自分は、FF10発売当時のプレイヤーです。この頃のプレイステーション2RPGってだいたい大筋クリアに60時間前後ってところだったので、たぶんFF10もそのくらいだったと思います。一方で菊之助さん、少なくとも初回プレイ、コロナ禍のタイミングでの再プレイ、脚本のための文字起こしで最低でも3回はひととおりプレイしてると思うんですが、菊之助さんが話していたやり込み具合がちょっと一般のプレイヤーがまずやらないレベルだったので、どう少なく見積もっても自分の3倍~5倍はプレイしてると思います。オタクか!

FF10って発売当時のキャッチコピーが「世界一ピュアなキス」だったり、やはり悲劇的な運命に翻弄されるティーダとユウナの物語が何かと中心になりがちですが、それと同じくらいティーダとジェクト+ユウナとブラスカのような親子、スピラ(エボン教)とアルベド族(エボン教に反する機械を使う)やグアド族をはじめ、多様な種族の確執とかも含んだ複雑な世界背景も面白い部分なんですよね。今回は全体の方向性として、ブラスカ+ジェクト+アーロンの親世代の物語とか、ティーダやユウナだけでなくシーモアも含めた親子の関係性にもしっかり軸足を置いていたのがいいなと思いました。確かシーモア関係の背景って普通にストーリー進めてても見れなくて、ちゃんとサブクエストみたいなのやらないとダメだったはずなんですよ。そういうところをちゃんと歌舞伎本編に盛り込んでいくと最初に決めたからこそ、メインの布陣がティーダ、アーロン、シーモアなんだろうなって勝手に思いました。

衣装やビジュアルについては全体的に素晴らしいという前提で、ティーダってほかのキャラクターに比べてやや日焼けしてるんですよね(まあワッカもだけど)。そこで隈取?アイライン?みたいなのに白(パール?)を入れて、いにしえのガングロメイクみたいにしてたのがセクシーだなって思いました。パーカーっぽく見せかける和装も、髪をちょんまげっぽく結うのも最高でした。野村哲也氏(FF10のキャラクターデザイン担当)のちょんまげティーダのイラストをこの世に爆誕させてくれて感謝しかねえ。

喋り方とかそういうのも、どの役者の方も全体的に原作ゲームへ寄せてたと思うんですけど、ティーダを演じた森田成一さんが当時は年齢的にもお若く声優としての経験も浅く、そういった中でこそ生まれた粗削りさや勢いががティーダというキャラクター性にもすごくマッチしてたと思うんですよ。一方、菊之助さんのティーダはそうしたフレッシュさは出しつつも、少年から青年にかけてのアンニュイさというか憂いみたいなものが出てたなーという感じがしますね。なのでとくに後編からの、色々と思い悩むことが増えたティーダのナイーブな部分が際立って見えた気がします。

中村獅童さん

個人的にアーロンって「見た目の渋さのわりに声が結構若い」みたいなイメージだったんで、獅童さんの場合は実年齢はちょっとアーロンより上だろうけど全体のバランスで見ると年相応っぽく見えたのが何か不思議でした。てか検索して初めて知ったけど御年50であれだけアクションしてたんですか?!すげえな。酒を刀に吹きかけるアクションも「本物だー!!」って感じ。

アーロンは何より、衣装が大変だったんじゃないでしょうか。まずサングラスと片目を眼帯で一気に解消したのは頭いいなって思う一方、アクションとしてはハードル上がったような気がします。もともとが和服寄りなのでイメージ自体は掴みやすかったかもしれませんけど、バトルのときは片腕丸出し(しかも中ノースリーブ)(それでいてワキがトゥルトゥルであるのがゲーム体験として欠かせないっていう我々のワガママも汲んでくれている)(当時衝撃だったので)、これに加えて若いころのアーロンとの髪型の違いなど、色々と調整しなきゃいけない部分が多すぎの気がします。まず、そこをしっかりクリアしたところを褒めたい。

あと演出面では、アーロンが出てくるたびに最後のジェクトとのバトルとかで流れる「Otherworld」がテーマ曲のように使われていたところがむしろ良かった!もうこれが流れた瞬間、FF10のプレイヤーであれば真っ先にジェクトを思い出すんですよ。なので、これで個人的に「アーロンは、ずっとジェクトの想いを背負って戦っている」という印象になりました。

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公式で聞ける動画が違うゲームのしかなかった……。で、これ原曲ヘビメタなんですよね……歌舞伎でヘビメタの和風アレンジ流したことあるんだろうか……??いわゆるデスボイスっぽいのが印象的なんですけど、それをふんわりアレンジで落とし込んでたのがすごいですね。FFX歌舞伎では、最後のジェクトとのバトルは歌舞伎っぽいテンポ感とか、ツケの迫力を重視させたくて、あえてBGMとしての使用はやめたのかなーなんて思いました。

何よりユウナレスカとの一対一はアツかったですね……。ゲームとは違い、たった1人でブラスカやジェクトのために戦う。誰かに頼まれたからではなく、自分の意志と願いで友のために戦い抜いたアーロンは大変よかった。

尾上松也さん

すいません、松也さんはドラマ(ミステリと言う勿れ)で見かけて「めっちゃ変顔のうめえ俳優だな」って思ってました。こっちが本業じゃん!余談ですけど、自分が初めて歌舞伎役者の表情筋ヤベエって思ったのがNHK大河ドラマ風林火山」で見た市川亀治郎さんなんですけど、セリフじゃなくて身体やら顔で感情が伝わってくるからすごいよなー。

シーモアって言ってしまえば敵なので、彼の掘り下げってほどほどでもよかったと思うんですよ。でも今回は、ちゃんとシーモアという個人や、彼の両親についても丁寧に追ってた気がします。アルティマニア(公式の攻略本の名称)とかにしか書いてないようなこととかも含めてた気がするし。あと演出としての側面が強いかもしれませんけど、最初のシーモア戦とかでもパーティメンバーが1人ずつ戦ってやっとの思いで勝つの、シーモアの強さの格が上がっていいですね。

なお、死んでも蘇ってきて何度も戦うのは本当にそうなので原作再現です。正直「またか?!」な面倒くささはFF10未プレイでも伝わってきたと思います。

でもほんとシーモアの場合、何より見た目の再現が「これをどうすんの?!」って部分しかないので、よくやったと思います。髪型だけでも、もう髪型ってレベルじゃないので……。おまけに何度も戦うたびに見た目が変わるので、その変化の表現も大変だったと思うんですけど、よくもまあ最終まで要素ちゃんと押さえてやってますよ。それとシーモアのイメージカラーってあまり黒はないと思うんですけど、光を反射しないすごく上質な黒の着物をあてがってくれたのかなって感じで、あらゆる意味でパーフェクトでした。

中村梅枝さん

ルールーについては思ったよりこのツイーヨがふぁぼられたので再掲しておこう。

歌舞伎内で装備してたのはFFシリーズでマスコット的な扱いされてる「モーグリ」というキャラクターなんですが、FF10とかではぬいぐるみだけどほかのタイトルでは喋ったり、戦ったり、召喚されたり、まあ色々です。名前だけでも覚えてあげてください。

梅枝さんのルールーは原作にあったセクシーさを抑えて、より上品で洗練されたイメージに変換したような印象です。記憶の中のルールーは淡々としつつも言葉の端々からにじみ出る優しさ、みたいな感じだったんですけど、梅枝さんのルールーは言葉のひとつひとつから愛情が溢れていて、ここぞという時にはストレートに感情を出すみたいなイメージでした。ユウナのことをティーダに問い詰められて「止めなかったと思うの?!」って怒るところがめちゃくちゃ好きなシーンだったので、ここ本当にユウナのこと大事に想ってるのが伝わってきてすごい好きでした。

外見をいうと、胸回りをすっきりさせつつファーでボリュームを出してて、足回りはシルエットでバランス取ってて、原作はかんざし以外はわりと洋装なんだけどイメージがそのまま原作どおりで素晴らしかったですね。

シーモアとのバトルの反り?みたいなのもすごかった。FFの黒魔法って「ファイア(火)」「ブリザド(氷)」「サンダー(雷)」みたいな感じで、ゲームオタクからすると「あれか」ってだいたい表現とかも見当つくんですけど、そうじゃない人には伝わりにくいと思うんで、それをうまいことやってなーという感じでした。あの手からぱっとくす玉みたいなの放つやつとかね。

中村萬太郎さん

「23代目オオアカ屋」なんて歌舞伎のために生まれてきたようなキャラクターなんですけど、全然そんなことはなく。そこを語り部として割り切って、物語の外に置いたのは英断だと思います。別に本編にいなくても主軸のストーリーには関係ないしな。

3月21日に出てきたときはピッチャーみたいなフリしてたし(WBC準決勝真っ最中)、本編でほぼ笑うところないので観客の緊張をほぐすとか、そもそも歌舞伎わからん&FF分らんみたいな極端な客層が混在している中でうまくバランスを取る役目を担っていたと思うので、出番以上に重要なお役目だったと思います。あの「笑うところ」としての安心できる安定した面白さは、萬太郎さんの個性なのかな?と勝手に思いました。ほかの人がやろうとしても簡単にできることじゃない気がしたなー。歌舞伎初心者が最初から最後まで楽しく観劇できたのは、萬太郎さんの力が大きいと思います。

ただ背負ってたのがランドセルにしか見えなかったな。

中村米吉さん

これは何度も言ってるんですけど、あまりにも歌舞伎に無知無知プリンで新作歌舞伎「風の谷のナウシカ」でケチャを見た時に「歌舞伎って女性もいるんだー!」って素で思ったんですよね。いねえよ馬鹿。

FFX歌舞伎の配役が発表されて、まず一番最初にユウナが米吉さんなの見て「絶対めちゃくちゃ可愛いやつじゃん!!」って万歳三唱しました。まだ文字しか出てない頃から可愛いって信じてて、実物がさらに可愛くてもう言うことないです。

 

ユウナって肩と背中丸出しのまあまあセンシティブ衣装なんですけど、帯結び?っていうんですかね、あれはそのままにして、肌が見える部分は色を変えてぱっと見たときの配色のバランスを変えないっていう抜け道で素肌の印象を維持したのは天才の所業だと思います。髪型は原作より気持ち長めでふわっとさせて、丸みのある女性的なイメージを強めたのかな?可愛いね。

通常服も可愛かったけど、白無垢+ヴェールってめちゃくちゃよかった……。あと裾のガラスのビーズは遠目からのほうがキラキラ光ってるのが見えて、可愛くてよかったです。

直接見れてはいないんですけど舞台「オンディーヌ」への参加は知っていて、ここで女性的な演技についてさらに磨きがかかったらしいと見かけたので、巡り巡ってこういうことになるのかーと思うと素敵ですね。我々みたいな素人は女形というものの正解は分らないのですけど、FFファンの目線でとても「ユウナを演じてもらった」ので。個人的にユウナの存在感って、儚さとは違う気がするんですよね。もちろん時々迷うことはあるけど、確固たる意志がある。よくも悪くも自分でどうにかしようとする頑固者ってところもあるので、女性的な所作とか可愛いという大前提でそういう部分も感じられたと思います。

あと杖振り回す時はまあまあ腕力パワー!を感じられたので、ちょうどよかったな。

中村橋之助さん

ダメってことでは一切ないのだけど、原作ワッカの100倍お顔が整っている(※個人の感想です)ので脳がバグる。

ギャグ要素が少ない中、オオアカ屋が本編外の笑いを担っていたのなら、ワッカは本編で数少ない笑いの要素を担っていたなと思う。別にそこまで笑わせにきてるって感じではなく、リュックと一緒ににぎやか担当みたいな、シリアスな空気を邪魔しない程度に、でもほんのすこしクスっとなる感じの、品のいい笑いっていうか。

3月21日に見た時「リュックが知ってる!」って言うところで「ユウナ……じゃなくてリュックが知ってる!!」って急いで言い直したんだけど、そのあとはティーダとかがシリアスな会話に持っていったけど吉太朗さんが「いやそこアタシだから、アタシだよ?分かる??」って感じで軽く自分を指さしながら橋之助さんを問い詰めてて「はい、そうです本当にすいませんごめんなさい」みたいなリアクションしてて面白かったな。

実際、ゲームでもワッカとリュックってムードメーカーというかにぎやか担当に振られてると思うんだけど、橋之助さんはそれを自分のセリフじゃないところでじっくり演技してたなーというイメージ。シーモアの屋敷に呼ばれたときにリュックと小芝居してたところとか、歩いて移動してる時もだいたい誰かと何かを話してて、ふとした瞬間に暗くなってしまいがちな旅を少しでも明るくしようっていうワッカの心優しい部分がよく出てたように思います。原作のワッカは序盤とかまあまあデリカシーないというか考えなしなとこあるんでね……でも今回は想像だけど橋之助さんのお人柄のような部分も含めて、ワッカのいいところをしっかり描こうって印象でした。

歌舞伎だとワッカは「ユウナの母親がアルベド族で、ユウナがハーフって知ってたけど割り切ってる」みたいな感じになってたけど、原作だとたしかワッカってアルベド族が緑のうずまき目っていう見れば分かるような特徴すら知らなくて、本当にただエボンの教えを盲目的に信じて思考が止まってしまっている(弟のチャップの件もあるから仕方ない部分も大きいんだけど)ような感じが強かったんですよね。まあ、どっちかっていうと一般的なエボン教の敬虔な信者って感じで、ワッカみたいな考え方がスピラだと多数派なんだろうけど。

ちなみにチャップってPS2当時の3Dモデルだと正直なとこ顔の区別あんまりつかなかったんだけど、アルティマニアか何かにあったイメージイラストだと肌の色とか髪色はワッカと一緒だけど、顔立ちはティーダによく似てたんだよね。だから実際、異界で投影されたチャップは菊之助さんが演じてて髪型とかも再現してたのでよかったです。

あと原作だと最初はティーダのこと、シンに飲み込まれて記憶を失ったチャップが生きて戻ってきたんじゃなんてありえないって分かってるのに淡い幻想を抱いてルールーに一刀両断されたやりとりがあったような気がする。まだ受け入れられてないんだよな。でも、そういうところがなくなったのが不満とかではなく、くどくなったりFF10初見に分かりにくくなりそうなエピソードはカットしてる構成力がとてもよい。そのうえで、本筋に入ってない(たぶん)シーモア関連は増やしてるし。

取捨選択のベースは菊之助さんが作ったと勝手に思ってるけど、ファン目線だったらこういう細かいエピソードも断腸の思いで削ったと思うんだヨナ。そのへんも踏まえて「FF10はこういう体験だったから、こうする」っていう軸がブレることなく選び取ってるから、既プレイヤーが見ても「これはFF10だ」って思えた。まあ、いうて自分は「FF10が最愛!!」と胸を張って言えるほどではない、ひととおり遊んでるだけのにわかファンなんだけど、でもやっぱFF10だったと思うんだよなあ……。

後方席まで来てくれたのに、こんなブレブレのしか撮れなかったよ……。ていうか、この後ステージからシーモア(松也さん)が小走りで後方まで来てくれて「シーモアが走ってる?!?!」って死ぬほど動揺したわ。

尾上丑之助さん

パンフレットでお父上と同じ役を演じられるのを喜んでらして、いいなあと思いました。菊之助さんがが偉大な父をもつ点をティーダとの接点としてあげてましたけど、丑之助さんはそういうのをプレッシャーとしてではなく楽しみとして感じられててすごいなーと思います。ジェクト戦で子供のティーダが出てきてたけど、ジェクトにとってのティーダってまだまだこの子供のイメージなんだよね。ジェクトにとって泣き虫の小さな子供に見えていたティーダと、成長したティーダとぶつかって、今のティーダに倒される。ジェクトが夢のザナルカンドに帰りたかったのはそこにティーダがいるからで、一度は完全に諦めたけど子が父を超える瞬間を体感できたのはジェクトにとって幸せだったと思うので、こういう演出にしてくれて本当に嬉しかったなあ。

あと祈り子ね!見た目や口調こそ子供だけど、実際にはティーダを導くような役割もあるので子供すぎず、かといって大人でもないけど人間を超越したかのような、なかなかバランスが難しいところだったと思うんですよね。そこを堂々と演じ切ってたので素晴らしいと思います。

ちなみに、この少年のような祈り子はバハムート(召喚獣の中でも最強の一角)なんです。なので終盤の召喚獣戦からのあたりではバハムートと手をつないでて、イコール感があってよかったですね。衣装カラーも紫に寄せてたし。

上村吉太朗さん

正直なところ最初はリュックの見た目があんまりピンとこなかったんですよね。露出も多くてショートパンツとかのイメージが強かったし。でも動いているところを見てるうちに気にならなくなりました。仮面ライダーか。

バトルだとどっちかっていうと直接殴るタイプじゃなくポーション(回復薬)でサポートするキャラクターになってましたけど、このへんは人によると思うんですが自分はリュックにポーションめっちゃ使わせて回復メインとしてずっとパーティに入れて使ってたので、こういう感じでよかったです。段々ポーションがグレードアップしていってるらしく、21日はメガポーションって言ってた気がするので最後マジでラストエリクサー(パーティメンバーが全回復するFFシリーズの中でも概ね最強クラスの回復アイテム)とかになるんだろうか。

リュックって明るくて元気で身内を大切に想うとっても可愛い女の子なんですけど、舞台向けに少し感情をオーバーにするだけで一歩間違うとウザく見えてしまいそうなところ、吉太朗さんはそのあたりの加減を慎重にバランス取ったんじゃないかなって勝手に思ってます。さっきも言ったけど、ワッカとの小芝居が入ると舞台上の重々しい空気がだいぶ軽くなって、そこがすごくリュックらしいなって思いました。

逆にリュックのアニキ(本当にアニキって名前の兄)の再現度はマジでそのまんまで出てきた瞬間「ただのアニキじゃん!!」って笑いました。

中村芝のぶさん

まず「演者にやらせんな!!」ってのは若干運営への文句なんですけど、芝のぶさんがグッズのカード利用の有無とか周辺状況とか細かくブログとかツイッターとかで発信されてて、我々としては助かったんですけど、それ芝のぶさんの仕事じゃないよな?手厚いフォローがありがたいのと「そこはちゃんと運営がやれや!!」ってお気持ちです。

ユウナレスカのイメージとしてはやっぱ第一形態というか、まだ人間っぽさの残った時の印象が強かったので最初からかなり第二形態寄りで攻めてきたなーと思いました。まあそっちのはイメージは昔の回想で出てきた白い着物バージョンで回収してくれたので、手厚いなって。バトルではだいたい第二形態のイメージだったと思うんですけど、動きが八岐大蛇とかそういう感じにも思えたので、歌舞伎にも日本神話を題材にしたものもあるみたいですし、たまたまですけどFF10未プレイでも強敵感みたいなのは分かりやすかったんじゃないかなって思います。軽く検索したら菊之助さんが八岐大蛇を演じたこともあるらしいのかな??

芝のぶさんがパンフレットでユウナレスカのことをすごく深く考えてくださってて、本当に芝のぶさんがユウナレスカを演じてくれて本当によかったなと思います。彼女って昔の人物ということもあり、公式情報からして結構色々な解釈に分かれてるところ、芝のぶさんを見ているとすごく愛情深い人だったけれど、やり方や結論を間違えてしまった悲しい人だったのかなと思えました。端的に言うと化け物に成り果ててるし、おどろおどろしいし迫力もあるんだけど、でも動きのひとつひとつがとても綺麗で「美しい」になるんですよね……化け物なんだけどな……。

あとカーテンコールに出ていらしたときは昔のユウナレスカの、白い着物を着てらっしゃったと思うんですけど、たまたまよく視界に入ったのが丑之助さんを抱えてる彌十郎さんと、その隣に芝のぶさんって感じだったので、ティーダの母親にも見えて、3人が仲睦まじく寄り添ってるように見えてウワーーーーーーーーーッッッてなりました。

坂東彦三郎さん

キマリ is 喋らん。ユウナを守る以外の発言でぱっと出てくるのが「召喚士は通す!ガードも通す!キマリは通さない!(キマリが言ったわけではない)」になってしまうくらい……。

パンフレット見る限り菊之助さんがもう「キマリは彦三郎さん」って決めてたようなのですが、まさに佇まいとか存在感がキマリだったなーと思います。ほんっと喋らないのだけどバトルではしっかり戦ってたし、ユウナを守るというシンプルだけど貫くのが難しい行動理念をしっかり貫いてた人なので、言葉ではなく全身でそういったものが語られていたと思います。

菊之助さんがどこかで「キマリといえばガガゼト」と仰ってた気がするんですが、ガガゼトのあたりはすごく丁寧に描いてましたね。てかビランとエンケがめちゃくちゃビランとエンケなのよ(伝われ)。ロンゾって劇団四季みたいな、獣っぽいメイクに寄っていっても不思議ではないと思うんだけど、隈取でロンゾの獣っぽさと歌舞伎っぽさをちゃんと両立させててすごいなって思いました。

キマリはこうなのだけど、彦三郎さんご自身は結構はっちゃけるというか、明るい人なのかな?カーテンコールでわりとふざけている目撃談を見るので。そういうとこ可愛いなって思います。

中村錦之助さん

まず最初にブラスカの第一声を聞いた時に「声、若ッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!」って死ぬほどたまげました。旅をしていた頃は30代くらいだと思うんだけど、それで全然通じるわーって思えました。ブラスカの声って正直おぼろげなところなんですけど、もっと低めだった印象なので、錦之助さんはお声がやや高めでちょっとジェクトと話してたときのいらずらっ子っぽいイメージというか、若々しい印象に感じましたね。召喚士として使命に準じる姿、ジェクトやアーロンという仲間に見せる顔、ユウナの父としての顔と、色々な面をしっかり見せてくれたのでありがたかったです。

衣装は正直なとこ原作が「構造どうなってん??」って感じなところ、冠?とか首周りのシルエットとかカラーを忠実に再現して、イメージそのままなのでこれもデザインの妙でしょうね。素晴らしい。

坂東彌十郎さん

うまくどこがどう、と言えないのだけど立ち振る舞いがものすごくジェクトだったんだよなあ……存在がすごくジェクトだった。改めて原作のジェクトを見ると上半身裸だしタトゥー入りまくりなんだけど、特徴的なタトゥーが着物で隠れ気味になってたとしても全体がすごいジェクトとして疑いようのないデザインに仕上がってたと思います。腰布のカラーを膨らませてたんだと思うけど、あとあと原作を見るとそのカラーって全体のほんの少しなのに、歌舞伎側の衣装で見るとそれで全然違和感ないんだもんな……。

もう最初から最後までずっと子供との接し方に悩んでる父親って像だったので、この辺の葛藤とかはFF10を知らなくても伝わったんじゃないでしょうか。不器用でダサいとこ見せたくない頑固なオヤジなんだよね。昔はあんまり「父親」じゃなかったと思うけど。

結構な乱暴者のイメージあったんだけどそうでもなくて、それはたぶん原作の後に「ディシディアファイナルファンタジー(ボコスカ殴り合う対人ゲームみたいなやつ)」をやったせいの気がしてきた。ティーダへの言葉のかけ方とか、言い方とかすごいジェクトだったんで、よくよく研究されたのかなーって思いました。

中村歌六さん

色々な父親が出てくるけど、シドもまたひとりの父親だったんだよなー。背負ってるものが一族なので家族のスケールはデカいけど。やむを得ない理由があったとはいえ、どちらかといえば家族を見捨ててしまった父親が多い中、まず家族を第一に考える人(だからって本人の意思を無視していいわけじゃないが)。改めてそう思えたのは、歌六さんが豪快かつ丁寧にシドを演じてくださったからかなーと。

スキンヘッドっていう最強の特徴があるけど、そこ以外は結構カラーのイメージとか違うのに、ぱっと見たところで「シドじゃん!!」ってなるバランスな。

ビサイド・オーラカの皆さん

すっごい飛んで跳ねてびっくりしたな。後述してるけどブリッツボールって、FF10知らないと直感で理解しにくいところあると思うんですよ。それを身体能力やら演技力やらで「ブリッツボールだ!!」って思えるところに仕上げてるのがすごい!あまり歌舞伎で飛んで跳ねてみたいなアクション見ると思わなかったんでヒューー!!ってなりました。

モンスターデザイン

普通に特撮のガワみたいなのが出てきて「?!」ってなった。しかも陰影とかすごい細かい……。雑魚戦まで力を入れてくれてマジ感謝(サンキュ)しかねーです。

 

あとなんか思い出したら適宜追記します。

 

ゲームファン目線で適当にあれやこれや

・「ティーダ

萬太郎さんがパンフレットで少し触れてるんですけど、ゲーム内でティーダが「ティーダ」と呼ばれることってないんですよ。ゲーム、とりわけRPGって主人公=プレイヤーとなることもあって、ここまでのFFシリーズって概ねキャラクターに名前はあれど名前を自由に変えられるんです。FF10はシリーズ初のフルボイス化だったんですけど、その流れの名残もあってか、ティーダは名前を変えられる設定のためボイスでは呼ばれませんでした。だいたいユウナに「キミ」、あとは「お前」とかそんな。後々になって派生タイトルとかでティーダと呼ばれる機会もちょっとだけあったけど、でもちょっとだけなんですよね。なので、こんなに最初から最後までティーダが「ティーダ」と呼ばれたり、ティーダと名乗ってるところとか初めて見ました。不思議な感じもであり、個人的には嬉しかったです。

 

・最後かもしれないだろ
冒頭のティーダのセリフなんですけど、これ物語の最初の時点がユウナたちと旅をしてきてスピラのザナルカンドにたどり着いたところなんですよね。そこで、もう究極召喚を手にしてユウナがシンを倒して死ぬというタイミングが近づいている。だからこそ、これまでのことを全部話しておきたい……という感じで、ここから夢のザナルカンドから始まってスピラのザナルカンドにたどり着くまでの冒険はティーダの回想ということなんです。ゲームだとティーダの「この時、実はこう思ってた」みたいなモノローグが入るので分かりやすいんですけどね。ザナルカンドにたどり着いて、回想が終わってからはティーダのモノローグもなくなります。

 

・異界送り

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美しかったな……!
あと、そういえばなんだけどキーリカの異界送りの映像で花というか、そういう映像が見えたと思うんですけど、あれ明言されてたか分らんけど十中八九、棺です。それだけの人間がシンの襲撃で死んだという。

 

ブリッツボール

劇場で「??」みたいになってる人をちらほら見たんですけど、ブリッツボールって全部あれ水中でやってるんですよ。だからルカ・ゴワーズのメンバーとかが泳ぐような動きしたり、気持ちスローな動作になってたり、スケボーみたいなの使ってスーっと泳ぐように移動してたりしてました。序盤にサッカーのサポーターみたいなノリでドンチャン来たし、ティーダも蹴り技を使っているからサッカーかと思ったのに手を使ってる?!みたいに思った人もいるかもしれないんですけど、まあサッカー+ハンドボールみたいに思ってください。なんで何の器具もつけず、水中で無限に呼吸できるのかは我々も知りません。たぶんエボンの奇跡かなんかでしょう(適当)。

少しはイメージの参考になるかも↓

www.gamer.ne.jp

 

アルベド

リュックが仲間になってユウナたちに合流したあと、リュックがアニキとかに謎の言葉を発していたんですけど、たぶんあれアルベド族の独特の言葉の「アルベド語」です。いちおう公式で詳しく紹介しているので、気が向いたら見てみてください。

www.jp.square-enix.com

 

シーモアバトル

主に対シーモア戦で流れるバトルBGMがこれなんですが、FF10のみならずFFシリーズとおしても結構人気の高いバトル曲なんですよね。なので我々、これの和風アレンジで小躍りしてます(※反応には個人差があります)

 

・キスシーン

 

・ガガゼト山でのティーダの夢

これは歌舞伎勢に聞きたいんだけど、ティーダとかユウナがブリッツボール抱えて踊り始めたのってナウシカ王蟲の目の殻を持ってナウシカ菊之助さん)が踊り始めたシーンと同様の扱いってことでOKなのか?「歌舞伎にはそういうシーンをいれる」というお約束のようなものだと受け入れたんだけど、それで合ってるんだろうか。

 

あとここで祈りの歌が流れるんですけど。ここ以外のシーンって以下みたいな歌詞なんですよ。

いえゆい のぼめの
れんみり よじゅよご
はさてかなえ くたまえ

これを並べ替えて縦読みすると、日本語で意味がとおる言葉になるんです。

いのれよ  はてな
えぼんじゅ さかえたまえ
ゆめみよ
いのりご

で、ここのシーンだけ日本語で意味のとおる形で祈りの歌が流れるんですよね。たぶんゲーム内で、こっちの言葉で聞いたことはなかった気がするんですけど……たぶん。だから、こっちの歌詞が流れた時「?!?!」ってびっくりしました。ティーダがザナルカンドの真実に近づきつつある、という意味でもこの演出はトリハダでしたね。

 

召喚獣

ちょいちょい語られてたとおり、ゲームでは実際に各地の寺院に立ち寄って、祈り子に認められてユウナは召喚獣の力を手に入れます。最初がビサイド寺院にいた「ヴァルファーレ」で、以降は入手の描写は省かれてるけどたどり着いた先で「イフリート」「イクシオン」「シヴァ」「バハムート」を手に入れています。

スクリーンに出てきた召喚獣の見た目はゲームそのままで、属性やイメージでいえば、ヴァルファーレは風で鳥と恐竜のあいのこみたいな感じ、イフリートは炎で四つ足の獣っぽい感じ、イクシオンは雷で一角獣みたいな感じ、シヴァは氷でシリーズとおしてだいたい女性の姿なので雪女っぽい出で立ちは最高でした。

で、問題は「ヨウジンボウ」なんですけど、こいつは隠し要素なんでストーリー進めてても普通に手に入るわけじゃないんですよね。自分も取ってないし。ほかの召喚獣は仰々しい口上があったのにヨウジンボウだけ「ダイゴロウと一緒に戦ってるよ」「好きな言葉は心づけ」みたいなふざけた内容になってたんですが、そもそもそれ以外に語る要素がマジでねえ。FFシリーズ自体にはちょこちょこ出てるんですけど、大体どれも隠しとかサブストーリー的なところの存在です。

だから、なんでここに並ぶのか正直疑問なんですけど、唯一の和要素をもった召喚獣だから……くらいしか思いつかねえ……。菊之助さんが気に入ったからかもしれない。

召喚獣はいわゆる獅子?と呼んでいいのでしょうかね。5体の毛振りも見事でした。で、ヨウジンボウは笠をかぶってるデザインだから毛振りできずに刀を掲げてたな……。やっぱお前なんで出てきちゃったの感がすごいんだけど、歌舞伎って聞いたらワクワクしてついてきちゃったのかな……ならしょうがないね……??