キャラと目が合う畏怖を知ったVRアドベンチャー「東京クロノス」をクリアしたって話

自分のVRゲーム人生の1本目となった、VRアドベンチャーゲーム「東京クロノス」をクリアしたので感想文。ちなみにPSVRです。

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 「東京クロノス」をしぬほどざっくり説明すると、テキストアドベンチャーVR版というのが一番分かりやすいかと思います(厳密には違うと思うけど)。プレイヤーは登場人物の1人「櫻井響介」の視点で、久しぶりに再会した幼馴染たちと共に誰もいない渋谷――「クロノス空間」からの脱出を図るというSFミステリー系ですね。

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ものっそい主観ですけど、自分はテキスト主体のゲームというのは数年おきに革命が起きていると思っています。個人的に思うのは、かまいたち弟切草やるドラシリーズ、逆転裁判、428、科学アドベンチャーシリーズ、極限脱出シリーズ、ダンガンロンパ、十三機兵防衛圏あたりかな。作品自体の面白さはもちろんなんだけど、単純に「シナリオが面白い」だけでなく、何かもう一歩、ゲームとして爪痕を残してくれたというか。そういう意味で、本作はVRゲームとしての可能性もなんだけど、より魅力的なアドベンチャー作品を生み出すための手段としても一歩を示してくれたんじゃないかなと思っています。VRとしてのアドベンチャーというより、アドベンチャーのためのVR演出というか。

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犯人を殺し、閉鎖された「クロノス空間」からの脱出を目指す

ストーリーをもう少し紹介すると、ある日、主人公の高校生・櫻井響介が誰もいない渋谷で目覚めるところから始まります。そこで出会ったのは小学校の頃、毎日のように遊んでいた仲良しグループの面々と、見知らぬ青年。そして、この不思議な世界で彼らに突き付けられたのは「私は死んだ。犯人は誰?」という謎のメッセージ。やがて彼らは「犯人」を見つけ、殺さなくては「クロノス空間」から脱出できないことを知る……。

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自分のプレイ時間は8~9時間ほど。一応15時間以上って公言してる公式を擁護すると、最小限の分岐で済ませたこと(こっちいったらアカンやろって方が経験値で分かるからそっち先に突っ込んで回収する効率厨)、朝から晩までの1日プレイでプラチナトロフィー取ったのでスキップこそほぼ使わなかったけど一部セリフをボタン連打したことが大きいかなと思います。普通にやったらもう少しかかるはず。

まあ、一気にクリアしないと気が済まない展開だった、と受け止めてください。

 

内容についてはこれ以上語りませんが、エンディングまでよくまとまったストーリーで、キャラクターの深掘りも全員ちゃんとやってるし、これといったストレスなく(重要)最後まで楽しめました。シナリオ運びでめちゃくちゃ驚かせるとかそういうタイプではない、かなり王道の直球展開だったので、正直なところ予想はたやすいと思います。「ナ、ナンダッテー!!」って驚きより「せやろな知ってた」って安心感のが強いけど、だからってその手の王道スタイルは面白さが損なわれるわけじゃないってのは歴史が証明してるしな!

そして、キャラクターデザインがどれもめんこい。カラーがビビットでハッキリしていて視覚的に分かりやすいのもあるけど、動いて喋るとすごく可愛い。個人的なオススメは東国ユリアちゃんです。分かりやすい。

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“世界の一部”として物語を楽しむ

「東京クロノス」はどこぞで実地体験して「こりゃおもすれー!」となってPSVR買ったら買おうと決めてたわけなんですが、まず体験の時点で「キャラクターに胸倉を掴まれた」ってのが結構びっくりしたんですよね。もちろん、その行為は別のキャラクターに向けてなので自分ではないけれど、めちゃくちゃこっちを向くし、目が合うわけですよ。“まるでキャラクター側に自分を認知されているような感覚”に結構驚いた記憶があります。

そして改めてプレイしてみて分かったんですが、VRの没入感とアドベンチャーの親和性の高さはすごく可能性を感じますね。個人的にテキストアドベンチャーで重要視してるのは、まさに没入感なんですよ。UIひとつにしても、どれだけ我々を世界に引きずり込んでくれるのか。どれだけ騙してくれるのか。その点、ほぼ強制的に「ゲームしかできない状態」にさせられるVRはいい。普段、PS4とかで遊んでてもスマホゲーの周回操作とかアニメ消化とか色々やっちゃうじゃないですか。それすらできない閉鎖空間は今時なかなか手に入らないが、ここにあったのか。舞台とか映画とかもそうなんですけどね、もう「これしかできない」という空間は金を払わないと手に入らないし、出向かない貴重なものなんだ。

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それから、何より「自分がこの世界にいる」という圧倒的な幻覚……もとい体験。

例えばキャラクターが「あれを見て!」という。2Dの場合、それを受けて主人公の言葉なりが入って、背景やスチルがズームされる。それを眺めるわけです。でもVRでは、その言葉を受けて自分が「どこだ?」って見る。ほかのキャラクターが向いている視線の先を確認して、自分も同じように顔を向ける。

例えば、視界の範囲外から声がする。普通ゲームだったら、次の瞬間その原因は画面の中……プレイヤーの前に回り込んでいる。でもVRは「なんだ?」って自分自身が振り向く。振り向くと、その先に誰かがいる。

例えば、キャラクター同士で会話をする。2Dでは画面に表示されるのは、その場にどれだけ人がいても基本的に2~3人だろう。VRでは左右を見れば、プレイヤーたる主人公と会話をしていない子たちが会話をしている。全員で話し合いをする場合は、自分が発言をしているとほかのメンバーがこちらを向く。キャラクターを見るだけなら切り分けられるんだけど“キャラクターから見られている”というのは、自分がその場にいるような、境界が曖昧になるラインなのかなと思いました。個人的には、とりわけ好意的とか、さほど強い感情が渦巻いてなければいいんだけど、何かしらの思惑があった上でこっちを“見られている”と、意味もなく焦燥感のようなものに苛まれることも分かった。

例えば、キャラクターとの距離感。2Dだと概ね立ち絵かアップの二択になるけど、VRだとキャラクターが自分から見て「どのあたりにいるのか」で、色々なものが表現できるなと思った。「遠くから近づいてくる」という物理的な距離感もだし、信頼関係の強いキャラクターであればすぐ隣に寄り添うくらい近くにいてくれる。そして、警戒しているキャラクターが距離を詰めてきたら後ずさりしたくなる感覚がリアル。

こういう「自分がほどよく(重要)主人公と同調する」のがVRの醍醐味で、それをほどよく(重要なので何度も言う)体験できたなと思います。あんまり頻繁にキャラクターと接触あっても逆に疲れるので、基本的にはほどよい距離感でいられるのがいいなって思いました(恋愛系ならまた話は違うんだろうけど、むしろこんなん続くなら恋愛系はしんどいなと思ってしまった)(サマーレッスンどうなんやろな)。

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※これは自分で適当にキャラを並べたフィギャーモードなので、こういうショットはゲーム内に出てきません。

個人的よかったポイント

今回はとくにスタッフを意識せず買ったんですけど、個人的に映画の「HELLO WORLD」がなかなか好きだったんで、あとで色々「あ~~」ってなりました。

VRって没入感はいいんだけど「時間ってどう確認すんやろ、まあPSボタン押してHOME戻ればいいか」って思ってたんですよ。「東京クロノス」はメニュー呼び出すとでっかく時間出してくれたところが好きだった。あんまり没入感削がれないし、時間が分かる安心感。ほかのゲームも、まあ演出的に難しいやつもあるだろうけど時間はすぐ確認できるようにしてくれ。

ついでに自分は、普段はデュアルショックカナル型イヤフォン挿してるけど、VRのためにウェアラブルネックスピーカーを買ったので外部の音は聞こえるようにしておきました。ここは万全。でもソニーの回し者じゃないけど、これマジであったほうがいいと思う。自分が熱中するとぶっ通しでゲームやるタイプだから余計に。

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いわゆるスチルがないぶん、スチルと声優名を並べたPV仕様じゃなくて、オープニングとエンディングがちゃんと「この世界を描くぞ!!って気合の入ったムービー」だったのも好き。テレビアニメでよく見かけるような演出とかアングルをVRで表現してたのは面白かったです。藍井エイルさん、ゲームオタクとしては好きなんだけど、いかんせんアニメ見れないマンだし、あんまり遊ぶ作品に縁がなかったので今回じっくり聞けてよかったな。

マンガの吹き出しのように飛び出してくるセリフとか、テキストの流れ方みたいな文字の出し方、とくにエンドロールがいい。自分が今のところ世界で1番気に入っているエンドロールの出し方は映画「300」なんですけど、ここにセンスを感じる作品は好きですね。ここもれっきとした作品の一部だと思ってるので。それと「共犯者」という存在は後になって知ったんですけど、全部クリアしてからだとこのネーミングの意味もよく分かる。

それと、VRだからって変に「自分」を強調されなくてよかったです。例えばVRって「手」がめちゃくちゃ課題だと思うんだけど、これ未だに解決策らしい解決策もない気がする。出てくるとやっぱ手の一部だけになってしまうから「うーーーん???」て感じになるし、でもつい手を伸ばしたとき視覚に何もないと違和感があるし、あったほうがいいのかなという場面もある。使いどころがだいぶ重要な気がするので、そういう意味で「東京クロノス」は許容範囲内でした。

次回作への期待

もうすでに「ALTDEUS: Beyond Chronos(アルトデウス: ビヨンドクロノス)」が発表されているので、それを楽しみに待つんですが。

altdeus.com

 

それに向けてもっとこうだったらなーという点も少し。

背景やら3Dモデルのクオリティは言うまでもなく上がっていると信じてますけど、やっぱこのPS4時代のゲームを遊んでるともう一声ってなる。頑張ってほしい。

今回のストーリーでもっとこれが見たい、あれが見たいというのはそこまでないですが、やっぱ全体的にもっとボリュームほしいですね。次は丸2日くらいはかかるやつ頼みます。現状はまだ投資みたいな気持ちでいるし、値段はあまり気にしてないけど、この価格バランスが最適とは思ってないので(PSだけちょっと高いしソニーちゃんよお……)。今の時点でVR持ってて、こうした体験に価値を感じないプレイヤーはいないと思うけどね。

普通のテキストアドベンチャーみたいなスキップは難しいんでしょうけど、スキップが細切れシーンごとで何度も操作しなきゃいけないから、ほぼ意味がない(面倒くさいしシーンがよく分からなくなるから手動でボタン連打してたマン)。そのシーンごとに結構ロードも入るから、ここら辺なんかもうちょいうまくいってくれるとありがたいですね。個人的にはボタン押してる間だけ早送り、みたいな機能がほしい。

フィギャーモードはギャラリー的なやつだったかもしれないけど、正直遊び方がよく分からん。

 

余談だけど、これ面白かったのでついでにどうぞ。

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